時折、思い出したように粉雪が舞う寒い日がこのところ続いている。
注意しなければ見落としてしまいそうな『花Yuimaman 手作り工房』と書かれた
小さなプレートが風に吹かれてカタカタと音をたてる。
こんな日はさすがに散歩コースで毎日欠かさず立ち寄ってくださる花友さんもお休みだ。
私も種から育てた花たちが凍ってしまわないように花鉢を店先に移動してシェードを深く降ろし
た。必然的に休みだ(笑) いつの間にか会社を卒業して5年が経とうとしている。私は70歳になっ
た。花好きが高じてアレンジ教室を経て、フラワースクールで2年専用コース受講、認定試験後修
了証書授与。その後、同じ花好きの親友とマルシェに出店したり、ネット販売や友人知人に多分?
無理やり押し売りをしているうちに、自宅2階の1室から始まった花工房は屋根付き駐車場に
移りそしてドア付きの店に変わった。
このドア付きの小さな小さな店は、なんと夫のDIYによるものだ。私の退職で車を1台に
減らして空きスペースになった屋根付き駐車場を店に改装した。「長く働いてくれたあなたへ
私から感謝の気持ちだよ」と言ってくれた夫からのプレゼントだ。でも物作りと工具集めが
大好きで、あれこれ作って楽しんでいるだけの「何と言ってもタダの素人だよね」と思って
いる間におよそ2ヶ月かけてケガもなくかなりナイスな店が完成した。驚き!!!
木材の手配から細々とした必需品調達も、黙々とひとりでこなす工事現場を見ながら
ハラハラと心配する私!
気付くとご近所の方も集まって来て「旦那さんひとりで大丈夫なの」と心配してくださる。
また、毎日進捗状況を見学に来られる方や差し入れのオヤツを持って来てくださる方まで現れて
いつの間にか夫は人気者で賑やかな工事現場になった。
そして、この工事を通じて地域の方々に受け入れて頂いたと言っても過言ではない。
今まで30年以上住みながら仕事に追われてといえば言い訳になる。ただ、興味を持とうと
しなかった地域交流。いざ会社を卒業して、これからどうしても関わらないといけない中で
気付けば隣近所の方の名前すら知らない私だったが、夫のおかげで、思いがけない賑やかな
交流で明るいスタートになった。それからなんと今年で3年目を迎えた。小さな小さなフラワ
ーアレンジの店は夫が愛情をこめて作ってくれた私の宝物だ。
この部屋でアレンジフラワー造りに没頭している時、花友さんたちと庭の花談議で戯れて
いる時が私にとって至福の時だ。特別なことは何もない。穏やかな日常の中の仕合せだ。
ただ、去年後半は夢中になり過ぎた。ほどほどになれない私。請われるままにレジンのアク
セサリー、生花の寄せ植え、ガレージセール、町内会の文化祭出品、毎年恒例のしめ縄飾りの
予約も30本入った。持病を抱えていることを安易に考え過ぎていた。とうとう体調不良で
この1月は小さな店は『冬休み』とプレートを下げて寝込んでしまった。寝込んでいる間、
離れない愛犬マッシュとの接触もこのところおざなりになっていた。
「何事もほどほどが大事」と痛感した。今、小さな店は、PM1:00~5:00オープン、休
みは随時、と好き勝手にさせて頂いている。
年を重ねてこの家に夫とワンコの、ふたりと1匹家族。そしてそれも長くはない時間の先に
別れが必ずある。先のことは思うまい。今、この時大切なことを見失わないように、夫の愛情が
こもった大好きな小さな店で、一日一日を丁寧に穏やかに花を作っていきたい。
・小さな店(外観)


・作品集



・小さな店の店内





